宍粟市山崎町の北に梯(かけはし)という村があります。この北にある855mのピークが峰旗です([1])。このピークは南北に走る長い尾根の北端に位置しており,尾根歩きの目的地となりそうです。そこで起点は梯にして,尾根伝いに行ってみることにしました。
梯に車を停めて,与位に向かう峠越えの破線道を捜します。この道は,前に与位から宮山に登ったときには倒木がひどく,峠に登るのは断念しました。ということはこちら側も,と懸念したのですが,途中に「右與位道,左山道」という石標があったりして,良く使われる道だったようです。松茸山でもあるようで,秋には入らない方が良いでしょう。沢伝いの道で,地形図の破線は沢の通りですが,沢を歩くと水に濡れますから,沢沿いの斜面を歩きました。しかし,最後にはとうとう道と呼べるものは無くなりました。この地点には紫のビニールテープが木に巻いてあったのですが,どちらに行ったら良いのか分からないので,急斜面を登ることにしました。かなり急な雑木林を腕力で登っていくと,切り開きが現れ,それを辿ると峠に着きました。この切り開きがどこから上がって来ているのかが分かれば,もっと楽な登山になると思います。峠には,与位側に降りる切り開きもありましたが,降りれば倒木地帯でしょう。
一苦労して登った尾根ですが,道とは言えないにしても踏み跡があって,歩きやすくてほっとしました。倒木もあまりありません。しかし高度は未だ400m程度です。ここからは,581m,668m,743m,855mと尾根沿いに高度を上げていかねばなりません。まず450m+のピークに登りますが,木の間から与位や梯が見えます。しばらく平坦な尾根を歩き少し降りて,今度は581mに登ります。この付近は植林ですが,かなり伐採されています。その中に赤い「火の用心」の札が立っており,この上の送電線鉄塔への巡視路があることがわかります。巡視路は急斜面の植林を登って行き,プラ階段もあるのですが,杉の枝がその上に積もっていて,しばしば道が分からなくなります。私は途中で植林を抜けて,岩の多い雑木林を登りましたが,途中に大きな岩があり,その上からは与位,梯,宮山,水剣山が望める最高の展望が得られました。それにしてもきつい登りです。
ようやく頂上に着くと,送電線の周囲にはネットが張られています。送電線はピークから北に少し降りた場所に建てられており,その南にある581.3mピークに三角点(毛利四等三角点)があるはずなのですが,見つけられませんでした。なお「点の記」も同じルートで登っていますが,「本点に近づいて約200mは非常に急坂である」と書いてあるくらいで,ここで既に疲労困憊しました。しかし,まだ全行程の2割程度しか進んでいません。
送電線は播磨西線ですが,新しいだけあって大きなものです。ただし鉄塔の下は鹿の糞だらけで,しかも黒い大きな蜂がぶんぶん飛び回っているので,早々に北に進みました。この先も踏み跡があり,歩くのはさほど困難ではありません。植林もあり倒木も多少はありますが,歩くのに大きな障害ではありません。しかし,668mピークまでの登りは雑木林の急坂です。このピークの東側で,金属製ケース入りの方位磁石を拾いました。心当たりの方はご連絡ください。このようにこの付近は前人未踏では決してありませんが,踏み跡ははっきりしません。尾根なので道に迷う恐れが無いので助かります。このあたりでも,木々の間から展望があります。
しばらくは平坦ですが,また少し下り,再び登りです。ここで始めて700mに達します。この付近は尾根が岩場になっている所があり,地獄鎌尾根のミニチュア版のような感じです。亀裂が入って小さく割れるタイプの岩です。これを抜けて行くと,与位から見えているマイクロ波反射板が現れます。関西電力の与位反射板(標高699m)です。これも平成11年と比較的新しいものです。岩場に東向きに立っていますが,よくこんなものをこんな場所に建てたと感心します。
この先の雑木林には,赤い「火の用心」の標識を見ましたが,横長で反射板の方向を示していました。関電の人は,こちら側から反射板の保守に行かれるのだと思いますが,この付近までどうやって登ってくるのか,道はわかりませんでした。北を通っている送電線から855mピークを越して来ることも可能ですが,標識は743mピーク付近でなくなってしまいました。この付近もアップダウンが多くて疲れますが,かなり急勾配を登ると,855mピークから繋がる800mの尾根に達します。そこには広い切り開きがあり,「字奥山官林」と彫ってある石標があります。字体からしてかなり古そうです。これを辿って坂を登っていくと,遂に855mピーク(峰旗)に到達です。特に何もなく,展望もありませんが,木々の間から北に黒尾山が見えるので,尾根の北端に達したという実感が湧きます。ここから東の尾根に降りて関電の巡視路で与位の方向にも降りられそうですが,今日は更に尾根を北西に進みます。この付近は比較的切り開きがはっきりしており,快調に歩けます。尾根は840m+のピークで南西に向きを変えますが,ここを北に歩けば鞍部を過ぎて黒尾山から伸びる林道の終点に行けるはずです。停めた車に帰って来ることを考えなくて良いのなら,行ってみたいコースです。写真はこの付近から見た黒尾山山頂です。
ここからは下りです。目的地は,梯から上ノへ延びる峠を通る破線道です。雑木林の尾根は,だんだん歩きにくくなりますが,尾根をはずれる可能性はありません。しかし,まっすぐ尾根を歩くと峠の西側に降りてしまうので,適当なところで尾根から南に降りました。少し西寄りに降りすぎたため,非常に急勾配の植林に出てしまいました。尾根で見たようにこの付近の山は崩れやすい岩でできているようで,この付近の斜面は細かい岩の破片だらけで,歩くと容易に崩れてしまいます。足もとが不安定なので,木に掴まりながら降りました。
降りたのは峠の西側で,峠を登り返しましたが,この付近には道はありません。峠の東側は雑木林の藪で,道が見つからないので適当に藪を抜けましたが,少し降りると踏み跡がありました。明確なものではありませんが,東側から峠を目指せば,この踏み跡を辿れそうな気がします。踏み跡は水のない沢に沿って降りて行き,ついには梯林道の終点近くに達します。ここまで約5時間の山歩きでした。あとは林道を梯まで降りましたが,新緑が美しく,川の流れもきれいでした。梯林道の入口にはチェーンが掛かっており,車で入るには許可が必要のようです。途中に警告の掲示があり,「ここは林道です。立木伐採造林作業等以外の通行を禁止します。万一通行された場合いかなる事故が発生しても当方は一切責任を負いません。告 これより奥の山林で許可なく神仏の花を切ることを禁じます。」とあるのですが,無関係のことが二つ書いてあり,「当方」が誰なのかという疑問が涌きます。この付近の林道脇には,岩を祭ったと思われる小さな祠がありました。
このコースは適度に展望もあり,満足感の得られるものですが,距離が長くアップダウンが多いこと,最初と最後は藪漕ぎになる可能性が高いことから,健脚の藪好きの方にお勧めします。
展望 ★★☆
藪山度 ★★☆
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