2012年10月6日土曜日

中音水渓谷


音水川と赤西川の間にある中音水川付近の山は、登りたいとは思っていましたが、周遊ルートがうまく組めません。渓谷が長く延びていて、ぐるっと尾根をまわって帰って来られないのです。しかし[1]を読むと中音水渓谷には森林鉄道の跡があるそうなので、周回ルートにこだわらず行ってみました。

波賀町音水の「インクラ橋」を渡って林道に入りました。名前からして森林鉄道の跡です。しばらく歩いて、尾根が突き出ている所にカーブミラーと赤い「火の用心」がありました。ここから尾根に登ると原横行線4鉄塔がありました。引原川対岸の日ノ原集落がよく見えます。この後は尾根を歩きました。ちょっと岩がありますが、ごく普通の藪山で、音水四等三角点(727.37m)に着きました。ここからちょっと地籍調査のピンクテープがありますが、植林の鞍部を過ぎるとマーキングの無い藪に戻りました。823mピークも藪ですが、そこからいったん鞍部に降りて、また登ってピークに出て、渓谷を目指して南西に尾根を下りました。岩場に鋼鉄のロープが落ちており、岩の周囲にロープを巻いて何かを引き上げた跡がありました。尾根の最後は岩場が多く、急勾配で木につかまらないと降りられません。斜面は落ち葉と柔らかい土とガレ石で埋まっており、下手をすると長距離を滑落します。最大限の注意を払って降りると、道に出ました。地形図の破線道です。

この付近には人の活動の跡があり、道もしっかり整備されています。少し中音水川を遡ると、「引原川支流 中音水川源流」の標識が立っており、川を渡る鉄の橋がありました。これが破線道が川を渡っている所ですが、川沿いにも歩けそうだったので、中音水川を遡ってみることにしました。中音水川渓谷は音水渓谷に劣らない美しい渓谷です。特にこの付近は川の両側が広く、気持ちの良い場所です。最初は川の東側を歩いていましたが、岩が迫って歩けなくなったので西側に渡ると直径4mほどもある炭焼き窯の跡がありました。この後も川を何回か渡って川を遡りましたが、少し歩きにくくなってきたので川の西側を見上げると、きれいな石積みがありました。これが地形図の破線道に違いなく、ガレ石の急斜面を登って道に出ました。しばらく北に歩いて橋の流された谷を渡ると、小屋が二軒ありました。どちらも壊れかけており、隣には既に壊れた家の残骸がありました。よく見ると電気を使っていた形跡があります。

山側の小屋の前からさらに道を北に歩くと、地形図で堰堤の描いてある所に川を渡るコンクリート製の橋の残骸がありました(写真)。[2]を読んでいなかったので、ちょっと感動しました。この橋は途中で切れて、部品のコンクリートブロックが川沿いに落ちていましたが、橋の落ちた先には木で同じ様な橋を作った跡が残っていました。橋が流されてから木で作り直したのでしょうか。地形図では破線道はこの先も川の西側に描かれていますが、実際にはここで東側に渡っています。この橋の残骸は道から直角に延びており、道そのものは少し行ってから川に突き当たって終わっています。道の終端はしっかりとした石組みになっており、川から橋と同じくらいの高さがあり、おそらくこの道の先にも橋があったものと思われます。対岸に渡ってさらに中音水渓谷を遡ると、地形図で破線道が終わっている付近で道も終わっていました。ただしここからは西の尾根をジグザグに登る踏み跡があり、1032mピークの方へ行けるのかも知れません。

中音水渓谷はもっと遡れそうで、源流もこの先にあるのだと思いますが、疲れてきたのでこの辺で帰ることにしました。帰りは破線道をずっと南に歩きましたが、土石流や倒木で通れなくなっている場所が何ヵ所があり、そのような所では山側か谷側に巻いて進まねばならず、疲れました。そして岩の切通を通ると、いきなり橋に出ました。これは高い所に掛かっており、間の開いた二本のコンクリート棒なので、危なくて渡れません。しかたなしに谷に降りて登りなおしました。この先の道を歩くと車輪が落ちていました([1])。さらに先にはまたコンクリートの二本橋が二つも掛かっており、谷が深いので進むのを諦めました。先ほどの高所の橋の下の谷を地形図の破線道どうりに降りて、中音水川に出ました。この付近のことは、[1][2]に詳しく書いてあります。破線道はこの場所で急斜面を登っていますが、森林鉄道はこのような坂は登れなかったと思われます。他の部分はほぼ山の斜面に等高線に沿って引かれており、ここだけ急斜面を登るなら、何らかの仕掛け(インクライン?)が必要だったと思います。それを考えると、川の南でいちど東に大きく水平に戻って徐々に登るのは理解できるのですが、そもそもどんな車両が走っていたのでしょうか?

帰りは谷沿いの破線道を歩きました。最初は倒木が邪魔な程度で、良く整備された道です。しかし、[1][2]にもありますがコンクリートの二本橋と鉄製の二本橋が続いてあります。この二つも歩かずに谷に降りて巻いたのですが、谷側に降りる斜面は急斜面で、意を決して橋を渡った方が安全だったかも知れません。しかも道に戻ろうとすると石積みが邪魔で登れなかったりします。この先の道はどんどん荒れてきて、倒木や土石流で見えなくなっている所もありました。そしてほとんど道とは言えないようになり、疲れ果てて上を見ると、林道が走っていました。林道に出てから林道の終点(「中音水川源流」の標識あり)まで行ってみたのですが、林道がまっすぐに破線道に繋がっているわけではないのです。ですから何も知らずに破線道を東に歩くと、林道の下を平行に歩いてしまうわけです。この林道は歩くには十分でした。特に尾根の先で南に突き出た岩場を廻る時には、岩の迫力に圧倒されました。最近に岩の一部が崩れたらしく、明るい茶色の岩が露出していました。原横行線2鉄塔の上を通り、始めに尾根を登り始めたカーブを通って、音水に戻りました。

ここで歩いた道はほとんどが森林鉄道の跡のようです。ただ、破線道と林道がまっすぐ繋がっていないことから考えると、今の林道がそのまま森林鉄道の跡なのかどうかは疑問があります。中音水渓谷は美しいのですが、辿り着くにはかなりの努力を要することが分かりました。木につかまって登ったり降りたりする場面が多く、腕が痛くなりました。

展望 ☆☆☆
藪山度 ★★★
地形図は「音水湖」「西河内」です。

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