2016年8月18日木曜日

真南から登る氷ノ山

氷ノ山は兵庫県一の山ですから、登山コースも幾つもあります。しかしいつも地図を見て不思議に思うのは、真南の戸倉峠へ延びる県境の尾根を通る道が無いことです。非常になだらかな尾根で歩きやすそうなので、道がないというのは不思議です。そこで、様子を見に行ってみました。戸倉峠から登るのは距離がありすぎるし戻ってくるのも大変そうなので、広域基幹林道を使うことにしました。

閉店中のヤマメ小屋から林道に入ると、木材積み出し中の掲示が幾つもあります。トラックで道が荒れているかの心配しましたが、積み出しは舗装が終わってすぐの付近で行っていたので、ひどい荒れ方はしていません。林道を登って行き、橋を渡ってヘアピンターンする手前の小さな広場に車を停めました。林野庁兵庫県森林管理署の「国有林からのお願い」が掲示されており、「登山は自己責任が原則です」と書かれていましたが、まったくその通りの登山になりました。

広場の少し下に最近木材の積み出しを行った場所があり、斜面に道が付けられていました。シャベルカーが上下した後のダートですが、取り掛かりとしては楽なので、靴が汚れるのを覚悟で登って行きました。真っ直ぐに登ると植林の中で行き止まりだったので、ここから植林を登りました。地形図で見ると楽そうな斜面ですが、意外と急勾配でした。間伐した木や枝が地面を埋めていて、足を取られます。しかし平坦な場所もあって、一息つきながら登って行くと、30分ほどで尾根に出ました。尾根は広く、道らしきものもあり、ほっとしました。ここからは長い稜線歩きです。

植生は入り乱れており、シダの草原もあればコナラの林もあります。木があるので太陽に炙られることはあまりありません。しかし、徐々にネマガリタケが増えてきました。竹なのでまとまって生えていますが、密度が低ければ手でかきわけて通れます。密度が上がってきて、さらに茎が曲がっているものが増えてくると、突破するのは難しくなりますが、尾根は広く、探すとネマガリタケの生えていない場所もあるので、歩きやすい場所を探しながら進みました。勾配はずっと大したことはなく、登山という雰囲気ではありません。氷ノ山によく見られるブナの大木が多く見られます。しかし、徐々にネマガリタケが増えてくると、むしろ植林の方が有難くなってきます。どうやらネマガリタケは木の多い所は苦手らしく、植林だけでなくコナラでも密度が高いと下草はありません。1182m地点あたりにもそのような気分の良い林がありましたが、林を抜けると密集したネマガリタケの藪をどうやって抜けるか、悩まねばなりません。結局広い尾根を右往左往して歩きやすい場所を探したのですが、はたして自分が歩いた場所が最も良かったのか、確信はありません。どこかに道があるのではないかと密かに期待していたのですが、かつて道があったという形跡する見つけるのは困難でした。なお、1183m地点には「?戸倉コース 28 サンヨートランジスタラジオ」という板が落ちていました。氷ノ山でよく見る、かつてのスキーコースの表示ですね。1292m地点付近には、大きなブナがまとまって生えていました。

大きな木の周囲にはネマガリタケが生えていないので一息つけますが、それ以外はずっと藪となりました。どんどん背丈が高く、強力になっていきました。緑色の茎(稈というようです)で葉をつけているものはまだ弾力性があるので押しのけられますが、枯れたものは固く、折れていればその先は竹槍のようです。気をつけないと怪我をします。経験的には、進行方向に倒れている場合には左右に押し広げて通り抜けられることもありますが、進行方向に直角方向に倒れている茎を跨いで進むのは非常に困難です。地面を見ると他に下草などはなく(陽が当たらないので当然ですが)スカスカなのですが、前進するにはかなりの腕力が必要でした。GPSの記録を見ると、このあたりでは時速0.2kmほどの速度になっており、これが2時間近く続きました。かなり県境から東に離れた場所を登っていたので、最初は県境の稜線に戻ることを考えましたが、トラバースが困難なので、結局真っ直ぐに登って行きました。この付近は地形図では畑になっていますが、じっさいは背丈より高いネマガリタケの草原です。途中に写真のような面白い石がありましたが、面白がっている余裕はありません。また山頂に近づくと岩だらけの谷があり、それに沿って登ってもみましたが、すぐにまた藪になりました。標高1400mから上は、忍耐だけでネマガリタケの藪を抜けたという感じでした。最後は岩があったので登って周囲を見渡すと(藪の中では全く外が見えません)、目の前に東屋があってびっくりしました。急いでネマガリタケの上を滑るような感じで歩いて行って、やっと登山道に出て、東屋で休めました。

この登山道は三ノ丸コースでした。東屋で休憩して三ノ丸の方向に歩き始めましたが、途中に下山道があったので三ノ丸には行かずに下山しました。避難小屋に行っても特に何もありませんし、周囲は霧で展望がほとんどありません。疲れ果てていたので坂ノ谷コースで下山しました。登山道の両側のネマガリタケを見て、よくこの中を抜けられたものだと我ながら関心しました。あの広大な笹薮には、白骨死体がいくつかあってもおかしくないという気がします。

こんな無茶な登山はしてはいけません。この尾根は冬季限定と考えるべきでしょう。それにしても、県境だというのに道も杭も無いのはなぜなのでしょうか?早く地籍調査が入って道を作って欲しいものです。

展望 ☆☆☆
藪山度 ★★★
地形図は「戸倉峠」です。

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