2008年5月18日日曜日

新宮と山崎の境界(牧山)

新宮と山崎の境界,つまりたつの市と宍粟市の市境の山並みは一度歩いてみたいと思っていました。2003年のレポートがありますが([1]),果たして2004年の台風でどう変わったかも気になるところです。

東から登ることにして、揖保川に尾根が突き出している平見に行ってみました。尾根の東端にある送電線の鉄塔に行きたかったのですが,巡視路が見つかりません。尾根の東端には地形図では記念碑の記号がありますが,ここは砂利の採掘場になっているようで記念碑(灌漑工事の感謝碑か?)の周囲もかなり削られています。道がわからないので,日曜日で誰もいないのを良いことに砂利を天辺まで登り,崖の端の藪から登りました。鉄塔までの距離はたいしたことはないのですが、カラスの死体があったりして気持ちの良い藪ではありません。鉄塔まで登ってから巡視路を西に行くと,南側から巡視路が登って来ています。どうやら平見の集落の方から来ているようです。この登り口を見つけるのが,やはり正道でしょう。

この鉄塔は播磨線53です。起点は西播磨変電所らしく西に進むと番号が小さくなります。紅白に塗られた鉄塔で低い場所にあるので目立ちます。照明用の装置が付いています。巡視路は良い道で西へ尾根を進みます。次の鉄塔は尾根には立っていないので,巡視路に分岐がありますが、先を急ぎます。その次の51は尾根にあります。鉄塔の下はどこもクマバチのようなの大きな蜂が飛び回っており,そそくさと退散しました。この付近は北にも南にも展望があります。川向こうの上ノ山の通信塔もよく見えます。

このあたりは送電線の巡視路ですから,歩くのは楽ですが,登り坂は息が切れます。まず平見四等三角点(374.60m)に出ます。周囲は特に特長のない植林です。次の鉄塔も眺めがよいのですが,南にある家氏の南側の山は木がすっかり切られてその中に作業用の道だけが見えています。なかなか凄い眺めです。次の390m+のピークに登ると南の鉄塔へ行く分岐があります。このあたり,鉄塔の間隔がやけに狭いような気がします。さらにこのピークの先で巡視路は南の尾根に行きますが,付いていくと市境をはずれてしまいます。ここは方向を見定めて巡視路から藪に入る必要があります。少し藪を下ると切り開きがあります。鞍部に降りると,北側から幅1mほどの道が登ってきており,これが西の市境の尾根に延びています。ここは地形図では下比地の南から砂防ダムの脇を通って道が延びている谷の突き当たりなので,作業道が延びて来ているようです。

この先は登りですが,道があるので楽です。しかし,その先の430m+のピークではこの道は北側を巻いて行き,さらに下りそうになるのでピークを目指して登りました。少し登ると,高いところでピークを巻いている道があり,これを行けば良かったのですが,ピークに行ってみようと更に登りました。倒木だらけのピークには出たのですが,その先でピークから降りようとすると道が全くありません。ここは尾根が直角に北に曲がっているのですが,それに気がつかなかったのです。苦労して急斜面を北に進んで尾根に出ましたが,道があるときは道を行く方が楽だとつくづく思いました。

この先は植林が多く,そのため倒木もかなりあります。ただし小さな木なので避けることは可能です。そして急坂を登って,大谷四等三角点(429.76m)に出ます。ここも特筆することもない静かな山中です。この先もアップダウンが続きますが,三角点の西側では何の気無しに歩いていたら真北に登る尾根に乗っていて慌てて戻りました。この先は雑木林の尾根道で時折倒木がある程度です。435mピークも気を付けないと広い南側の尾根に進みそうになります。

この先は植林が増えてきて尾根にも倒木が増えます。倒木地帯もありますが,隣接した雑木林の中を進んでいけます。そうこうしていると,右手にネットが現れます。このネットはしばらく続きますが,ネットの内側は植林の倒木を処理した後のような感じです。ここは上比地の溜池のある谷の突き当たりで,下から見上げても植林を片付けた跡が見えました。木が無いので眺望もGOODです。

この先は再びアップダウンが続きます。上比地と下比地の堺の石標がありました。そろそろ足も疲れてきます。頑張って急斜面を登ると,今度は上比治三等三角点(505.72m)があります。この付近では一番高い山なので,ちょっと満足感があります。ここには「牧山山頂(505.7m)」と書いた札が下がっています(写真)。考えてみるとこの山は牧の裏山にも相当するわけです。次は牧から登ってみようかと考えています。この先には「←牧山・柏原城跡→」と「牧山登山口(国見の森P)」と書いた札が木に下がっており,ここへ出る登山道があることが分かりますが、更に北の方に尾根を進みました。

この後も小さなアップダウンが続きます。いささか疲れ気味でピークを次々と越えてゆくと,この付近でもっとも高い509mのピークに近づきます。以前にこの尾根を北から歩いてきたときに,509mピークの北側の鞍部から東側の林道に降りたことがありましたが,かなり急勾配で,林道が地形図よりももっと南に延びていたような気がしたので,今回は509mピークの南の鞍部から東側の植林を降りてみました。しかしこれも不正解な下山ルートで,結局509mピークの東に延びている小さな尾根を北に越えないと林道に出られないことが分かり,四苦八苦していると,眼下に広い空き地が見えてきました。これは遊鶴寺という寺院の跡らしく,発掘作業が行われた後のようでした。ちょっと見学してから,よく整備された道で沢を下って林道に出られました。

意外だったのはこの尾根には大倒木地帯がないということでした。509mピークの北の尾根は倒木だらけだったと記憶していますから,南側の方が歩きやすいようです。

展望 ★★☆
藪山度 ★☆☆ 降り方に気を付けましょう

2008年5月4日日曜日

二つの塩野三角点

安志の南にある大富豪山については,いくつか登山記録が見つかります([1],[2],[3])。実は自分でも登ったことがあり,2007/06/16の「山崎の上ノ山から塩野三角点」の塩野三角点とは大富豪山のことです。塩野三角点は実は二つあって,大富豪山の東の山にある368.6mの四等三角点も塩野三角点です。この二つをいっぺんに巡ってみよう,というのが今回の企画です。

最初に考えていたルートは,塩野から川戸に通じる峠に行って,そこから大富豪山,それからもう一つの塩野三角点を訪れ,北に引き返して通信塔の保守道路で下山するというものでした。しかし,川戸峠に向かう前に塩野六角古墳を訪れたところ,古墳の裏側に山に入る道を見つけました。ここから登ってぐるっと一周して川戸峠に帰る道が理想ですので,ここから登ることにしました。

古墳の裏の獣避けのゲートを開けると,良い道が延びています。しかし,この道はたちまち消えてしまい,あとは藪を抜けて尾根を登ります。そんなに歩きにくくはないのですが,見上げると木が無くて背の高い草か笹の茂った地帯が広がっており,それよりはと左手の植林の中を登りました。この植林は急坂ですが,短距離で尾根に上がれます。この尾根は300mくらいの地点で,山頂の広い平坦地まではまだ少し植林の中を登る必要があります。これも急坂でしたが,結局30分ほどで塩野三角点(368.6m)に着きました。調べてみると「点の記」も六角古墳から登っており,三角点に到達するには最短ルートのようです。

この付近は地形図で見るとおり南北に細長い平坦地ですが,植林の倒木が若干あります。展望はありませんが,倒木を避けながら少し北に歩くと,地形図には無いピークがあり,北東の展望が開けます。写真はこの付近から見た明神山です。更にその北の370m+のピークは伐採されており,展望は良好です。ここはネットが南北に張られており,それに沿って北に歩きます。この付近で東に降りれば通信塔への巡視路ですが,西に向かって植林の尾根を歩きます。作業道があり,快適に歩けます。なだらかな尾根を進むと,302mピークも伐採された植林です。ここからは市境(姫路市と宍粟市の境界)となり,その西の270m+の付近までは平坦で歩きやすいのですが,ここから大富豪山までは150mを登らねばなりません。このスロープはかなり急で,しかも中途半端に伐採された雑木林なので足下が不安定です。50mほど登ると,また左側にネットが張られています。ネット沿いに雑木林を登っていきますが,そのうちに倒木だらけの植林に入ります。その植林の奥が,大富豪山の塩野四等三角点(422.6m)です。

前に来た時と同様に,細い植林が風で揺られて軋んで音を立て,さらに互いにぶつかり合って音を立てています。記憶を頼りに倒木の中を捜して三角点を見つけました。

大富豪山で一休みして,あとは川戸峠まで尾根を降ります。少し降りると笹が大量に茂っているのでそれを左に迂回し,尾根に戻って急勾配の植林を降りると関電の巡視路に合流します。あとは山崎線7の鉄塔を通り,スタスタスタと峠まで一直線でした。峠にはお地蔵さんがあり,良い道で塩野に帰れます。

この付近の山は,2004年の台風による倒木がまだ多く残っており,平坦な尾根でも歩きやすくはありません。しかし展望もあることですし,山の空気を満喫できるショートコースとしてはお勧めです。

展望 ★★☆
藪山度 ★☆☆

2008年5月2日金曜日

峰旗

宍粟市山崎町の北に梯(かけはし)という村があります。この北にある855mのピークが峰旗です([1])。このピークは南北に走る長い尾根の北端に位置しており,尾根歩きの目的地となりそうです。そこで起点は梯にして,尾根伝いに行ってみることにしました。

梯に車を停めて,与位に向かう峠越えの破線道を捜します。この道は,前に与位から宮山に登ったときには倒木がひどく,峠に登るのは断念しました。ということはこちら側も,と懸念したのですが,途中に「右與位道,左山道」という石標があったりして,良く使われる道だったようです。松茸山でもあるようで,秋には入らない方が良いでしょう。沢伝いの道で,地形図の破線は沢の通りですが,沢を歩くと水に濡れますから,沢沿いの斜面を歩きました。しかし,最後にはとうとう道と呼べるものは無くなりました。この地点には紫のビニールテープが木に巻いてあったのですが,どちらに行ったら良いのか分からないので,急斜面を登ることにしました。かなり急な雑木林を腕力で登っていくと,切り開きが現れ,それを辿ると峠に着きました。この切り開きがどこから上がって来ているのかが分かれば,もっと楽な登山になると思います。峠には,与位側に降りる切り開きもありましたが,降りれば倒木地帯でしょう。

一苦労して登った尾根ですが,道とは言えないにしても踏み跡があって,歩きやすくてほっとしました。倒木もあまりありません。しかし高度は未だ400m程度です。ここからは,581m,668m,743m,855mと尾根沿いに高度を上げていかねばなりません。まず450m+のピークに登りますが,木の間から与位や梯が見えます。しばらく平坦な尾根を歩き少し降りて,今度は581mに登ります。この付近は植林ですが,かなり伐採されています。その中に赤い「火の用心」の札が立っており,この上の送電線鉄塔への巡視路があることがわかります。巡視路は急斜面の植林を登って行き,プラ階段もあるのですが,杉の枝がその上に積もっていて,しばしば道が分からなくなります。私は途中で植林を抜けて,岩の多い雑木林を登りましたが,途中に大きな岩があり,その上からは与位,梯,宮山,水剣山が望める最高の展望が得られました。それにしてもきつい登りです。

ようやく頂上に着くと,送電線の周囲にはネットが張られています。送電線はピークから北に少し降りた場所に建てられており,その南にある581.3mピークに三角点(毛利四等三角点)があるはずなのですが,見つけられませんでした。なお「点の記」も同じルートで登っていますが,「本点に近づいて約200mは非常に急坂である」と書いてあるくらいで,ここで既に疲労困憊しました。しかし,まだ全行程の2割程度しか進んでいません。

送電線は播磨西線ですが,新しいだけあって大きなものです。ただし鉄塔の下は鹿の糞だらけで,しかも黒い大きな蜂がぶんぶん飛び回っているので,早々に北に進みました。この先も踏み跡があり,歩くのはさほど困難ではありません。植林もあり倒木も多少はありますが,歩くのに大きな障害ではありません。しかし,668mピークまでの登りは雑木林の急坂です。このピークの東側で,金属製ケース入りの方位磁石を拾いました。心当たりの方はご連絡ください。このようにこの付近は前人未踏では決してありませんが,踏み跡ははっきりしません。尾根なので道に迷う恐れが無いので助かります。このあたりでも,木々の間から展望があります。

しばらくは平坦ですが,また少し下り,再び登りです。ここで始めて700mに達します。この付近は尾根が岩場になっている所があり,地獄鎌尾根のミニチュア版のような感じです。亀裂が入って小さく割れるタイプの岩です。これを抜けて行くと,与位から見えているマイクロ波反射板が現れます。関西電力の与位反射板(標高699m)です。これも平成11年と比較的新しいものです。岩場に東向きに立っていますが,よくこんなものをこんな場所に建てたと感心します。

この先の雑木林には,赤い「火の用心」の標識を見ましたが,横長で反射板の方向を示していました。関電の人は,こちら側から反射板の保守に行かれるのだと思いますが,この付近までどうやって登ってくるのか,道はわかりませんでした。北を通っている送電線から855mピークを越して来ることも可能ですが,標識は743mピーク付近でなくなってしまいました。この付近もアップダウンが多くて疲れますが,かなり急勾配を登ると,855mピークから繋がる800mの尾根に達します。そこには広い切り開きがあり,「字奥山官林」と彫ってある石標があります。字体からしてかなり古そうです。これを辿って坂を登っていくと,遂に855mピーク(峰旗)に到達です。特に何もなく,展望もありませんが,木々の間から北に黒尾山が見えるので,尾根の北端に達したという実感が湧きます。ここから東の尾根に降りて関電の巡視路で与位の方向にも降りられそうですが,今日は更に尾根を北西に進みます。この付近は比較的切り開きがはっきりしており,快調に歩けます。尾根は840m+のピークで南西に向きを変えますが,ここを北に歩けば鞍部を過ぎて黒尾山から伸びる林道の終点に行けるはずです。停めた車に帰って来ることを考えなくて良いのなら,行ってみたいコースです。写真はこの付近から見た黒尾山山頂です。

ここからは下りです。目的地は,梯から上ノへ延びる峠を通る破線道です。雑木林の尾根は,だんだん歩きにくくなりますが,尾根をはずれる可能性はありません。しかし,まっすぐ尾根を歩くと峠の西側に降りてしまうので,適当なところで尾根から南に降りました。少し西寄りに降りすぎたため,非常に急勾配の植林に出てしまいました。尾根で見たようにこの付近の山は崩れやすい岩でできているようで,この付近の斜面は細かい岩の破片だらけで,歩くと容易に崩れてしまいます。足もとが不安定なので,木に掴まりながら降りました。

降りたのは峠の西側で,峠を登り返しましたが,この付近には道はありません。峠の東側は雑木林の藪で,道が見つからないので適当に藪を抜けましたが,少し降りると踏み跡がありました。明確なものではありませんが,東側から峠を目指せば,この踏み跡を辿れそうな気がします。踏み跡は水のない沢に沿って降りて行き,ついには梯林道の終点近くに達します。ここまで約5時間の山歩きでした。あとは林道を梯まで降りましたが,新緑が美しく,川の流れもきれいでした。梯林道の入口にはチェーンが掛かっており,車で入るには許可が必要のようです。途中に警告の掲示があり,「ここは林道です。立木伐採造林作業等以外の通行を禁止します。万一通行された場合いかなる事故が発生しても当方は一切責任を負いません。告 これより奥の山林で許可なく神仏の花を切ることを禁じます。」とあるのですが,無関係のことが二つ書いてあり,「当方」が誰なのかという疑問が涌きます。この付近の林道脇には,岩を祭ったと思われる小さな祠がありました。

このコースは適度に展望もあり,満足感の得られるものですが,距離が長くアップダウンが多いこと,最初と最後は藪漕ぎになる可能性が高いことから,健脚の藪好きの方にお勧めします。

展望 ★★☆
藪山度 ★★☆